Oh 脳《007》English を英語と訳したお間抜けな話
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English を英語と訳したお間抜けな話
HOTEL CALIFORNIA, 1976
Last thing I remember, I was
Running for the door
I had to find the passage back
To the place I was before
- 《余録》この逸話は、その当事者には悟られないように、システム開発の現場で起きた出来事を恣意的に脚色しています。ここから「何を学ぶか/学ばないか」は、受講者のみなさん次第です。□
規制緩和により、新規航空会社の設立や路線開設が自由化されました。新規参入の「とあ〜る社」では、乗務員の研修カリキュラムを検討しますが、それを他社に委託すると費用も嵩みます。そこで、既存のものを流用して、独自のカリキュラムを作成することにしました。
研修も無事終了して、どうにか運行開始まで漕ぎ着けました。ところが後日、その研修カリキュラムには、重要な欠陥(勘違い)があったことが露呈します。というのは…
参考にした既存のカリキュラムは、伝統も実績もある英国の航空会社が作成したもので、同業他社の大多数もそれを導入しています。その中には、次のような一節が…
English:○○ hours/week
とあ〜る社では、国内のドル箱路線で業績を上げたら、やがては国際線にも進出する予定でした。それに、乗客には外国人も含まれますから、国際語である英語教育は欠かせないと考え、この一節をそのまま、
英語:週○○時間
このような日本語に翻訳して、語学研修にも多くの時間を割きました。ところが後日、それは本来のカリキュラムで意図したものとは違うことが露呈します。
... zap ...
勘のいい受講者のみなさんはすでに、話の途中で気が付いたかもしれませんね。
英国での伝統も実績もある研修カリキュラムの作成者は、後にそれが諸外国でも導入されることなど予想していませんでした。かつて、不愉快な思いをした自身の経験から、接客には「気配りのある言葉を込めたサービスが大切」との思いを、そのカリキュラムに込めたのです。ですから、その精神を正しく「継承」するには、
日本語:週○○時間
と翻訳すべきだったのです。世界中で導入されることを彼が意図していたら、そこには English ではなく「母国語」と書き記したことでしょう。ですから、この場合には「English を日本語と訳す」のが正解だったのです。□
《Note》 実際には、航空業界とは無縁のシステム開発で起きました。伝統的で実績もあるシステムの運用マニュアル(英文)を、日本語に翻訳するときに、この逸話と同様の誤解が生じたものです。不幸にも、その事実が露呈したのは運用後でした。クラスに命名するときも、勘違いを誘発しない気配りが大切なのは、言うまでもありません。「ご注文は○○でよろしかったでしょうか」と言われて、私と同様に違和感を抱くみなさんなら、この逸話にも納得がいくかもしれませんね。□