リファクタリング:switch 文の隘路
switch 文が抱えるハードコーディングの問題点を回避するとともに、動的スキーマを適用して、実行時にオブジェクトの動作を規定する方法を紹介します。
すでに、矢印キーを使って、テトリミノの回転/シフトができます。これに加えて、space キーを押すと、テトリミノを落下できるようにします。
伝統的な構造化プログラミングの手法では、このような問題解決にあたって switch 文による条件分岐を導入します。しかし、ここで問題となるのは、新たな機能を追加したいときに、switch を伴うコードの断片を更新する必要が生じることです。そのため、要求仕様の変更が必要になることから、そのモジュールを永遠に閉じることができません。これは問題です。
class Tetris: def __init__(self, client): self.client = client for item, mino in self.client.testCase: tray = Tray() mino.tray = tray mino.dispatch = self._cases(mino) self.client.addItem(item, mino) self._addTray(tray, item) self._addMino(mino, item)
テトリミノのインスタンス属性 .dispatch を介して、特定のキーを操作したときの処理を「実行時に拡張できる」仕組みを提供します。
def _cases(self, mino): return { Key_Right: mino.shiftRight, Key_Left : mino.shiftLeft , Key_Up : mino.counterClockwise, Key_Down : mino.rotateClockwise , } def keyDown(self, sender, e): KeyHolder(e.Key).switch(self.client.cases()) self.client.update()
このように、既存のモジュールでは、矢印キーを使ってテトリミノの回転/シフトができますが、この部分はなにも変更を加えません。その代わり、テストケースには、新たな機能だけを追加します。
class ExWindow(Window): def cases(self): return self.mino.dispatch def _attach(self, e, dispatch): key = Key.Space if key in dispatch: return if e == "C": dispatch[key] = self.downC; print "**C**" if e == "O": dispatch[key] = self.downO; print "**O**" def downC(self): print "<<< C" def downO(self): print "<<< O"
すると、2種類のテトリミノ(C型/O型)のテストケースでは(新たに)space キーには応答しますが、その他のテトリミノは(従来のまま)応答しません。つまり、既存のモジュールは(閉じたまま Closed)変更せずに、新たな機能だけを付加できます。switch を伴うコードの断片に「外部から機能を注入した」ことになるのです。
こうして、テトリミノを落下させるときに、異なるテストケースを用意して、それぞれを独立してその動作を検証できるようになります。そのため、わずかな機能の違いだけを実現するために、異なるテストケースを反映させた個別のクラスを定義する必要もなくなります。